FC2ブログ

Swiss Indoors Basel の秋が来た

—2016年の秋と2017年の秋—



今年の10月は妙な天候で、雨ばかり降って、台風が立続けにやってきて、10月特有の気持ちよい秋晴れの日がなかなか見られない状態だけれど、雨の週末は自宅でのんびりとテニス観戦もオツなもの。今はちょうど、スイスのバーゼルとオーストリアのウィーンでATP500の大会が開かれて佳境を迎えているが、1年前のスイスインドアでは錦織がバーゼルの民を沸かせていたっけな…と遠い目になった。錦織がデルポトロに初めて勝利したのも1年前のバーゼルだった。
今年は地元出身のヒーロー、フェデラーが出場してバーゼルの民を大喜びさせている。
…というわけで、今回は昨年と今年の「スイス・インドアズ・バーゼル」大会についての雑感を少々。

※ここのところ、テニス記事が続いていますが、次回は映画についての記事になる予定ですので悪しからず(笑)


「スイス・インドアズ・バーゼル」(以下、スイス・インドア)を初めて観たのは昨年(2016年)だった。それまで何年もテニスなどすっかり忘れていたワタシだけれど、昨年の7月にふとした事からウインブルドンを観てテニスの面白さを再認識し、以降、現在に至るまで主にGAORAとWOWOWでテニス中継をチェックしている。

今年は初めて1年を通してテニス中継を観戦することになったわけだが、10月終わりの時期のスイス・インドア大会を観ていると、この1年間の男子テニス界の、人々の予想を超えたあれこれについて思いが至り、なにやら感慨深かった。

2016年のスイス・インドアは、地元出身のテニスレジェンド、フェデラーが膝の故障のため休養に入っており欠場、ナダルも10月始めに不調のシーズンを切り上げる事になったので欠場となった。2大目玉を欠く事になったバーゼルだったが、10月初旬の楽天オープンで臀部故障のため2回戦途中で棄権してポイントを稼げなかった錦織が、急遽WCを貰ってスイス・インドアに出場することになり、バーゼルも新たな目玉が出来て大喜び、というわけで、昨年のバーゼルのスターは多分、錦織だったと思う。ワウリンカもチリッチもラオニッチもデルポトロも居たけれども、バーゼルの観客が非常な関心をもって試合を観ていたのは錦織だった気がする。過去に1度だけ参戦して準優勝したことはあったが、例年はバーゼルには参戦しないので珍しかったという事もあるだろうし、スイス勢ではあるが、バブことワウリンカはフェデラーの地元のこの大会では、毎度お粗末な結果しか残せないので、あまり期待されていなかったという事もあるかもしれない。

昨年はバーゼルの公式サイトを英語版でチェックしていたのだが、錦織について、自家用ジェットでやってきたこと、金魚のうんこのように(というのはワタシの意訳だけど)日本人記者の一団が彼の周囲を取り巻いていること、例年はナダルに引き受けてもらう慣わしのオープニングマッチだが、2016年は欠場したナダルの代わりに錦織に引き受けてもらうこと、などが書かれてあり、錦織に対して非常に関心を持って見守っている気配が感じられた。


一目見るなりドン引いた、真っ黄色なウェア

そんなバーゼルの人々の好奇心の中、オープニングマッチに登場した錦織は、唖然とするような猛烈な黄色のウェアを着て、イヤでも異彩を放っていたが、その1回戦ラジョビッチ戦では、ところどころ見せ場を作りつつ危なげなく勝ち上がり、2回戦ロレンツィ戦では鮮やかな股抜きショットからポイントを決めて満場の観客を沸せた。スイス・インドアの公式ページでは"Yellow fever hit the Basel!"という見出しで、錦織の勝利を伝えたが、このyellow fever(黄熱)というのは、錦織の猛烈にビビッドな黄色いウェアと、錦織がアジア人であることを引っ掛けた、皮肉まじりな見出しだったと思う。

スイス・インドアでは、オープニングマッチに登場するのは名誉な事と位置づけていて、ナダルが欠場なら他のスター選手にそれを担って貰うようにするらしいのだが、今年(2017年)はそれを期待の若手・シャポバロフが担う、と公式ページで告知していた。そのシャポバロフの初戦の相手は我らが杉田祐一であった。つまり、シャポのお相伴で杉田もスイス・インドアのオープニングマッチを担う事になったわけで、昨年の錦織に次いで、バーゼルでは2年続けて日本人選手がオープニングマッチに登場したことになる。

杉田はかなり気合いを入れていい試合をし、フルセットの試合はタイブレークまで縺れたが、最後は自身のサービスをWフォルトで落としてThe Endとなった。惜しい試合だった。しかし、第3セットで1-4と追込まれたゲームカウントから、怒濤の3ゲーム連取で4-4に追い付いたあたりなど、杉田の今年の躍進を象徴するような鋭いショットや闘志が随所に見られてワクワクしたし、観客を沸せる場面も幾度かあった。彼の試合を観ながら、今年、杉田が覚醒して大躍進してくれなかったら、日本のテニスファンはどんなに虚しい気分で様々なトーナメントを眺めただろうか、と改めて思った。


気迫のこもったショットを打ち、ガッツポーズを繰り出す杉田

特にファンではないものの、錦織はTOP10に居て、どのトーナメントでもある程度勝っていくのが当たり前のように思っていたが、今年は2月から不調に陥り、ついに8月には手首を痛めてシーズン終了、休養に入るハメになった。西岡も膝を痛めて3月初旬から前線を遠ざかっている中、もし誰もATPツアーで活躍できる日本人選手が居なかったら、他国の選手に贔屓が何人かいたとしても、もの足りなく感じたに違いない。4月のクレー大会あたりからめきめきと頭角を表した杉田は、芝のシーズンに初タイトルを獲得し、今年のバーゼルには世界38位のランキングで初参戦した。惜しいオープニングマッチを落としたが、どの大会にも本線からダイレクトインでき、出場する大会を選べる立場になった中堅どころの30位台のランカーとして、ATPツアーに定着したのだな、という感じが強くした。

…というわけで、再び2016年のバーゼルに話を戻すと、
準々決勝での錦織は、それまで一度も勝った事のなかったデルポトロにストレート勝ちを決め、世界5位の実力を示した。デルポトロはリオ五輪以降、ずっと好調を維持してスイス・インドアの直前のストックホルム・オープン(ATP250)で優勝し、バーゼルに乗り込んできたので、少々、疲れもあったのだろうが、錦織は活き活きと動いてストローク戦でも打ち勝つなど、この試合は故障明けとは思えない調子の良さだった。

デルポトロは今年(2017年)も、ストックホルム・オープンで優勝してから、スイス.インドアにやってきた。昨年と全く同じである。が、今年のデルポは夏前まではあまり調子が出なかったし、ドロー運も悪くて、早い段階でフェデラーやジョコビッチに当る事が多く、春から夏にかけてはあまりポイントを稼げなかったが、全米オープンあたりから登り調子になり、ぐいぐいランキングも上げてきて、久しぶりに10位台に戻って来た。が、デルポの雰囲気は昨年と今年でかなり異なる。昨年は陽気で、ボールボーイや線審にお茶目に絡んだり、試合の合間に愛嬌を見せることも多かったが、今年はむっつりとしていて愛嬌をふらず、些細な事で苛立ちや怒りを見せたりすることもあり、あまり精神状態がよくないようにも感じた。


2016年はこんなおどけた表情をよく見せていたが…


今年はほとんど笑顔を見せず、おどけた仕草も表情もしない

本当かどうかは分からないが、デルポには鬱の傾向があるらしく、昨年はそれが出なかったが、今年はやや鬱傾向が強いのかもしれない。20代の半ばの脂の乗り切った時期を2年も、手首の怪我による手術とリハビリでの戦線離脱で棒に振った事がそういう形で影響を残しているのかもしれない。が、大きな図体でやたらに愛嬌をふる時のデルポはぶりっこ(死語?)っぽくてちょっとうさん臭いので、今年のように愛嬌を見せない方がアラサー男としては相応でいい、とワタシは思う。


2016年のバーゼルに話を戻すと、デルポトロを撃破した錦織は、準決勝でビッグサーバー、ミュラーと対戦。先にブレークしながらも1セット目を落とし、2セット目はタイブレークを制して取り、フルセットの末に難敵ミュラーを破って決勝に進出した。
その際の、スイス・インドアの公式サイトのニュース見出しは日本語で「錦織、決勝進出!」というものだった。錦織番で現地に詰めかけていた日本人記者の一人にぴったりな日本語の見出しを考えてもらって掲載した、と注釈が入っていた。
バーゼルは名だたるスイスの時計メーカーが集まっている所として有名らしいが、スイス第3の都市で、ライン河畔のさほど大きくない街である。そんなところにわらわらと錦織にくっついて日本人記者が団体で押し寄せてきたのだから、物珍しくてかなり目立ったのだろう。もしかすると、先程書いた「Yellow fever hit the Basel(バーゼル、黄熱に襲われる!)」というのは、錦織単体のことではなく、錦織にくっついてきた日本人記者たちも含めての、揶揄的な表現だったのかもしれない。

ともあれ、錦織は決勝に進出し、楽天オープンで獲れなかったATP500のタイトルをスイスで獲るかと期待されたが、ロンドン8に滑り込もうと躍起になっていたチリッチの前にストレートで破れ去り、なにやら竜頭蛇尾なことになってしまった。しかし、準決勝までは錦織の試合にかなり現地が盛り上がっている気配がTV中継を観ていても感じ取れた。彼の試合は常に満員で、試合の合間に客席が映ると、観客は非常に熱心に身を乗り出す感じで試合を観ていた。昨年はフェデラーが欠場だったので、その分、錦織への好奇の視線が集まったのではないかと思うが、好奇ばかりでなく、好感をもって迎えられているのはTV画面からも感じられた。彼の試合が面白い事もあっただろう。

*****
スイス・インドアは、70年代に始まった歴史ある大会で、平日の昼間でも客入りが良く、地元のフェデラーに熱狂的な喝采を送るのは当たり前として、他国の選手にも分け隔てない拍手を送るあたり、どこか日本のジャパン・オープンに近い雰囲気があるように思う。(ジャパン・オープンだって70年代から開催されている歴史ある大会なのだ)

世界からTOPの選手が集まってきて闘いを繰り広げる年に一度の宴として、バーゼルの民がとてもこの大会を楽しみにし、大事にしている気配が、日本のテニスファンが年に一度だけ自国で開催されるATPツアーである楽天ジャパン・オープンを楽しみにしている空気と似ている気がする。観客席のインティメットな雰囲気や、熱心な観戦態度や、参加選手みなに暖かい拍手を送る観客の気持ちが似通っているのではないかとワタシは感じるのである。

今年は1月のブリスベンからATPツアーを折に触れてTV観戦し、ジャパン・オープンは生で観戦したし、けっこう沢山試合を観て、移り変わるシーズンにつれて様々な大会もTV中継で垣間見たわけだが、ワタシは何となく数ある大会の中で、ATP500ではスイス・インドア大会が一番好ましく感じた。(MASTERS1000ではモンテカルロか。何しろ海を背景とした会場の景色が美しい)

昨年、試合中継を観たときにも記憶に残っていたのだが、スイス・インドアでは選手入場の時にオリジナル(だと思うけれど)BGMを流すのだが、これがなかなかドラマチックでいいのである。これから戦闘モードに入るぞ、という雰囲気が盛り上がってくる。何か、テニスコートに入ってくる選手たちが、闘技場に出て来る拳闘士のようにも見えて来るBGMである。おそらく大会のテーマ音楽なのだろう。とてもいいと思う。会場はインドアで、多目的ホールにテニスコートをしつらえて開催しているのだが、客席の照明は落とし気味で、中央のブルーのコートがほわりと暗い背景の中に浮き上がるように鮮やかに映えている。諸々、演出が効いている大会だ。


*****


2017年の決勝は当然のように、地元のヒーロー、フェデラーとデルポトロの横綱級の対戦となった。フェデおじは、こういう局面では絶対に外さない男なので、彼が優勝する可能性のほうが高いだろうけれど、ワタシはここ一番という時に物凄い集中力を発揮する、のそのそデルポの一発力に賭けたいかな、という気分である。

それにしても、
去年、スイス・インドアで錦織とチリッチの決勝戦が行われている時には、今年(2017年)、フェデラーとナダルが復活して4つのGS優勝を分け合い、最終戦までもつれ込む1位争いを繰り広げるなんて、誰一人予想しなかったし、ジョコビッチ、マレー、ワウリンカ、錦織らが夏頃に相次いでシーズン終了と休養を宣言して戦列を離れるなど、誰も考えもしなかっただろう。ただ、ジョコビッチは2016年の夏以降、不振に陥っていたので、彼がシーズンを早めに終える事は予想できなくもなかったが、他はかなりビックリだった。マレーは2016年後半に頑張り過ぎたので、今年は揮わないだろうとは思っていたが、予想を上回る低調ぶりで休養に入ってしまった。彼等の休養宣言が全米オープンの前に集中したので、今年の全米オープンは昨年のTOP5が誰も出ない(シーズン終了宣言はしていないが、常に怪我の絶えないラオニッチも全米はスキップした)という、何やらお寒い大会になってしまった。

ワタシはいつもBIG4が揃っていてほしい、などと思うタイプのテニス・ファンではなく、どちらかといえば新しい顔ぶれが台頭してくる新鮮なシーズンの方がいいと思っているので、期待できる若手が何人か新たに登場し、年齢的にはアラサーなれども、気分はネクスト・ジェネレーションだと語る、中堅ながら初めてATPツアーに定着した杉田のような選手が活躍した2017年は、なかなか面白い年だったと思う。
ただ、いつもいつも、メジャーな大会ではフェデラーかナダルが優勝する、というような状況だと些かゲンナリして、あまり好きでもなかったジョコビッチが懐かしくさえ思えて来る。36歳にもなって、まだ1位争いができるというフェデラーという怪物に立ち向かえるのは、万全のジョコビッチか、集中力を最大に高めたデルポトロぐらいしか居ないだろうから。


誰か、このおっさんを止めてちょうだいな

来年、ジョコビッチは完全復活できるのだろうか。マレーやワウリンカはどうだろうか?キリオスは来年の上海はどうするのか? 色々と興味深い。
一応、日本人としては錦織がTOP10に返り咲けるかチェックしようとは思うが、来年は西岡も復帰するし、何より杉田が30位台をキープできるかも、とても気になるところである。来年はポイント失効との闘いにもなるが、頑張って30位台をキープし、あわよくば20位台、それ以上のランキングを目指して、行かれるところまで行ってほしいと思う。来年の秋にはATP500でも優勝が狙えるような選手として、ひと回り存在感を増した杉田をスイス・インドアで観たいな、と思う。
頑張れ!杉田!! 
今年の残りはパリのマスターズのみとなったが、最後の一踏ん張りで、全豪のシードに滑り込んでほしいものである。

男子テニス界では、何が起きるか分からない。来年もまた誰も予想できない展開が待っているかもしれないが、予定調和よりは波乱があった方が面白いだろう。
誰が浮いて、誰が沈むのか、現時点では全く分からないけれども、だからこそ面白いわけである。錦織が復活できるかできないかは誰にもわからないし、杉田がもう一段階、大化けする可能性だって、ないとは言い切れないのだ。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する